避けては通れない!二世帯住宅だからこそ起こる問題。

◎二世帯住宅以前の人間関係
二世帯住宅二世帯住宅という暮らし方をこれから始めようとしているにもかかわらず、相手が何を考えているのかわからないという親も子も多いようです。
しかし、親と子の間で考え方にギャップがあるのはそれでしかたないという前提に立ったうえで、二世帯住宅での生活の開始までに、どういう人間関係を調整していくかというのが大切な課題です。
まず、注意しなければならないのは、親子双方が相手に対してもつ期待です。
相手には相手の考え方や価値観があります。自分の期待を相手に押しつけることは、価値観の押しつけでもあり、二世帯住宅生活のトラブルの原因にもなりえるのです。
互いの価値観を知るためには、無駄話を交わすことが意外と有効な手段です。
そして、あまり相手に期待しないで、距離を置き続けることも大切です。
◎家に対する夢いろいろ
家、住まいに対する条件や理想は人それぞれ異なり、家族間でも隔たりがあります。
親子・夫婦の各人が抱いている家への要望や理想が、最初から全員一致することなどありえません。
そのため、二世帯住宅にリフォームするときや、新築するときには、この隔たりが問題になります。
こんな家に住みたいという夢には、それぞれの価値観が反映されるのです。
そこで、最初に、親世帯・子世帯全員の夢をざっくばらんに語り合うことが家づくりの第一歩でしょう。
家への夢や理想は、互いが互いの夢や理想を打ち消し合うような形になりがちです。
しかし、普段から親子双方が互いの価値観への認識を深めていれば、相手がどうしてそのような家に住みたいのか、それぞれの身になって考えることができるようになります。
二世帯住宅が終の住処になる場合が多い親世代は、あきらめ・我慢・妥協などがしづらいようです。
住まいには後でどうすることもできない部分と、後でどうにかなる部分があります。
親の譲れないことが、将来的に子によって変更できることなら、子世代としては今は譲るということも検討した方がよいかもしれません。
親の時間は子ほど長くないのです。
◎一時の我慢、一生の不満
家をつくる際には、フローリングの材質や色、ドアの形や取っ手の種類、数千パターンの中からの壁紙の選択など、家族で一つ一つ決めていかなければならない膨大で複雑な項目があります。
しかし、家族の中でも立場の弱い人はなかなか発言ができず、我慢することになる場合も多いようです。
また、我慢することは美徳と考えられ、我慢しないことイコールわがままと考える人も年配の世代には多いようです。
しかし、我慢が一生の不満になりかねないのが二世帯住宅です。
家に住むことは全ての生活のベースです。
毎日、そこで過ごすうちに、住まいに対する不満は日々着々と募るものです。
そして、次第に、話し合いの場では自分の意思でした我慢が、誰かに強いられた我慢のように思えてきてしまうのです。
我慢には予算の関係でどうしてもしなくてはならない我慢もあるので、すべてが悪いわけではありません。
しかし、我慢しなければならないなら、その理由に納得することが必要です。
納得のいった我慢は、後に不満に変わることはありません。
後々まで引きずる我慢がいちばんよくないのです。
また、我慢の必要度についても、話し合いの場で専門家を入れて検討する必要があります。
その時に我慢しても、将来解決することのできる我慢もあります。
しかし、土地に関することや、建物の構造にかかわることなど、後からやり直したり、手を入れたりできないことに関しては、言うべきときに自分の考えをちゃんと述べ、その上で選択された結果なら、受け入れることが必要です。
◎子の配偶者の親への配慮
そこに住まない子の配偶者の親にとって、自分の子の家であってそうでないのが二世帯住宅です。
子世帯が核家族で暮らしている間はひんぱんに行き来があったのに、二世帯住宅に住み始めたことで疎遠になった例も少なくありません。
もともと、親同士には距離があるものです。
二世帯住宅は、別に住む子の配偶者の親にとっては、なおさら敷居の高い住まいであるということを認識する必要があります。
そこで、子の配偶者の親に対する配慮は、子世帯よりも親世帯が進んで動くことが大切です。
子の配偶者が実家に帰ったり、その親が遊びに来たときに、二世帯住宅に暮らす親がどのような態度をとるかが大きなポイントです。
子は子でも、子の配偶者は別の親をもっていること、その関係は自らの親子関係同様にかけがえのない大切なものであることを忘れてはいけません。
親がそう思っていることが子の配偶者の親にも伝われば、長くよい親戚関係が築かれることでしょう。
二世帯住宅の設計の際にも、子の配偶者の親や兄弟との交流をできるだけ円滑にするための配慮をしておくことも必要でしょう。
たとえば、子世帯専用の玄関があれば敷居の高さはカバーされます。
また、子世帯が独立したリビングなどをもてば、親子水入らずの時間を過ごすことができるでしょう。
◎他の兄弟との関係
子世代に兄弟がいる場合、二世帯住宅での暮らしの開始をきっかけに、兄弟間でのトラブルが起こりやすくなります。
兄弟といえども、大人になるに従い他人の様相を見せてきます。
また、仕事の違いなどから収入にも格差が生じ、配偶者同士で生活を競い合う面も出てきがちです。
しかし、兄弟は平等にと育てきた子どもたちに不平等が起きることは親としては心苦しいことでしょう。
兄弟のうちの誰が親と同居するかは、成り行き次第の場合が多いようです。
しかし、他の兄弟が知らない間に、二世帯住宅計画が進んでいくことだけは避けるべきです。
リフォームや建て替えで二世帯住宅を建てるときに、費用の大部分を親が負担した場合、他の兄弟とのトラブルが起こると、親の死後まで引きずりかねません。
そこで、事前に親の財産、親の介護などに関する意思の統一を兄弟間で図っておく必要があります。
「同居する兄弟に親の介護を担ってもらう代わりに、土地建物の相続を他の兄弟は権利放棄する」とか、「親の健康が損なわれたときは分担して介護する代わりに、親の遺産は分割する」など、あらかじめ話し合うことが兄弟の関係を良好に保つことにつながります。
◎相続、融資、税金の問題
核家族の住まいであっても煩雑になりがちな、相続や融資、税金の問題は、二世帯住宅の場合はさらに複雑になります。
以下は、登記・融資・税金面からみた注意点ですが、詳細については税理士や税務署などに相談した方がよいでしょう。
◆登記の面
・単独登記(二世帯住宅一戸の所有権を一人のみの名義にする場合)
<注意点>各世帯の複数人が出資しているのに、たとえば父親のみなどの一人の名義にすると贈与税が発生する。
・共有登記(二世帯住宅一戸の所有権を複数の名義にする場合)
<注意点>出資額の比率に応じて持ち分を登記する。住宅ローン控除がそれぞれに適用され、親が死亡したとき、親の持分をローンごと子が相続すれば、借り入れ時に設定した抵当権の問題も起こらない。
しかし、親の持ち分を他の兄弟などの相続人が相続することになると、ローンの引継ぎ、抵当権、誰が住むかなどの問題が起こる恐れがある。
・区分登記(二世帯住宅を二戸に分け、それぞれに所有権を登記する場合)
<注意点>完全分離型の二世帯住宅のみ区分登記が可能。一棟の建物にした場合、棟内での各戸の構造上の独立性と利用上の独立性(各戸を鍵つきの扉で仕切れるなど)があるという要件を満たしていることが必要で、各戸において単独登記、共有登記をすることは可能。
◆融資の面
・借り入れ資格をもつ人が複数いても、公的融資は一戸一口。
・完全分離型かつ区分登記の場合、公庫であれば二戸がそれぞれ別に借り入れできる。
<注意点>公的融資では、各戸を鍵つきの扉で仕切っても、内部で行き来できる場合には一戸とみなされ、二戸が別々に融資を受けることはできない。
◆税金の面
・完全分離型かつ区分登記の場合、税制的なメリットを受けやすくなる。
<注意点>二世帯住宅購入時にかかる贈与税と、親が死亡したときにかかる相続税の両面から検討する必要がある。
◎第三世代(孫)への配慮
子世帯に子どもがいる場合、つまり、親世帯にとっては孫がいる場合には二世帯住宅は三世帯住宅と言い換えることもできます。
そして、子どもが生まれたことにより子世帯のアパートやマンションが手狭になったとか、子どもの教育資金がかかり家にまで資金が回らなくなったことから二世帯住宅に住み始めるケースなど、子世帯の子どもの存在は二世帯住宅の計画のきっかけそのものともいえます。
しかし、小さい子供にとって、生活の変化は大きな負担です。
そのため、大人は二世帯住宅の竣工や生活開始を小学校入学に合わせ、幼稚園を変わったり学年の途中で転校したりする子どものストレスを軽くしてあげるなどの必要があります。
特に、親世帯と子世帯の間にわだかまりのある場合は、できるだけ子どもの前での言動に注意を払いたいものです。
大人にとっては取るに足らないようなことでも、子どもは深刻に受け止めてしまうかもしれません。
第三世代は祖父母と両親の板ばさみになり、小さいながらも苦労することが多いのです。
◎相続時精算課税制度を利用
これまでは相続税に比べて贈与税はたいへん高く設定されていました。
そのため生前贈与はあまり一般的ではなく、住宅取得資金の贈与の特例(平成17年12月31日までの特例)で550万円まで無税の贈与を受けることができる程度でした。
しかし、平成15年度税制改正で創設された相続時精算課税制度により状況が一変しました。
父母(贈与者)が65歳以上で、子(受贈者)が20歳以上のとき、相続時精算課税制度を選択すると2500万円までの贈与税が非課税になり、しかも、上限に至るまで何度でも非課税で贈与ができるのです。
ただし、この制度は、贈与税が無税になるわけではなく、親が亡くなって相続する際に精算されて課税されるのです。
また、相続時精算課税制度では、贈与された分も相続額としてカウントされるので注意が必要です。
この制度を利用する場合には、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの間に、相続時精算課税制度を選択する旨の届出書と贈与税の申告書の提出をしないと特別控除の適用が受けられません。
さらに、一度この制度を選択すると撤回することはできず、贈与者が亡くなるまで適用され続けます。
住宅取得資金の贈与の特例を同じ贈与者から並行して受けることもできません。
この制度を利用すると、贈与税ではなく相続税を後に支払わなくてはなりませんが、活用を検討してみるだけの価値はあるかもしれません。